『余命十年』区切りごとに綴られている言葉 ~前半~
1
あと10年しか生きられないとしたら、あなたは何をしますか。
長いと思い悠然と構えられますか?短いと思い駆け出しますか。
あと10年しか生きられないと宣告されたのならば、あなたは次の瞬間、何をしますか。
2
お父さん、ごめんなさい。
成人式の振袖着られなくて。
お母さん、ごめんなさい。
何一つ期待に添えないことばかりで。
桔梗ちゃん、ごめんなさい。
優しくしないでって、時々思う情けない妹で。
ごめんなさい。
誰より遅く生まれたのに、誰より早く死んでしまって。
残りは、あと8年。
3
楽しいってこういうこと。したいことしてる感覚。誰にも流されない感触。
単純で笑っちゃう。でも笑うことって大事。笑えることって必須。楽しいって人生の基盤。
人生楽しんだ者勝ちだもの!
4
誰かと同じじゃイヤダなんていつか言っていたけれど、今はみんなと同じじゃなきゃ不安でたまらない。違うならば強くなりたい。みんなと違う道を堂々と歩ける人になりたい。
強くなりたい。
強くなりたい。
心が固まっちゃうくらい、強くなりたい。
5
病気になる前の自分がやたらと輝いて見える。思い出の中にいるわたしは、何でもできる子だったみたい。
本当はただの弱虫だったくせに。桔梗ちゃんと比べられるのが怖くて、違うキャラを演じているうちにウケがよかったものを選ぶようになっていた。だからわたしは祭り。おしとやかな桔梗ちゃんと正反対の賑わい。悲しくても笑った。悔しくても笑った。余命10年だって笑い飛ばしてやった。
神様にあらがえないとわかってる。
羨むなんてバカみたい。
そしたらやっぱり笑うしかないのかな。
6
死ぬことは怖くなかった。だって何が起きても確実に私は死に至る。
わたしは死ぬ。
それだけは決まっているんだから、安心して。
7
わたしは何のために生きて、何のために死ぬのだろう。
どうしてわたしだったんだろう。逃げ道のないここは狭い檻の中みたいだ。どこへ行っても結局壁にぶつかる。
過去は変えられない。でも未来さえ変えられない。
死ぬことは怖い。
でも生きることも怖い。
人生を選ぶこともできない。
8
美幸ちゃんはわたしの地雷を知らない。だから素直になれた。なりきってしまえば心まで飾れる。
楽だった。病気じゃないわたしは。
このまま嘘が真実になってしまえばいいのにと、少しだけ祈った。
9
好きだよって、時には誰かに言って欲しい。
それだけで生きている実感が持てる。女の子からでもいいや。
好きだよ。
なんていい言葉だろう。
それだけで優しくなれる。
私も誰かに言おうかな。
10
カズくんとはもう会わない。会わない方がよかった。
だってわたしは誰かをすきになったりしない。
目を閉じるとすぐに浮かぶ。そういうのが今は居心地悪い。工作室の思い出だけでもう何も要らないのに。
出逢わなければよかった。
だけどもう、出逢ってしまった。